流れること

駅までの道を、歩いていた。

暗くなるにつれ、人が次第に増えてくる。

全てが、流れにとけ込んでいた。

時折、信号待ちで渦を巻いて立ち止まる。

そうして結局、みな同じ方を向き集まって波をつくっていた。

そして息苦しさから解放され、帰巣本能のままに、その時間を泳ぎきる。

いつの間にか刻まれている真面目な心とともに。

 

自然の道

今朝、意外に気温は低くない。車も走り出していた。

空き地は、雪が一面に残り真っ白いまま。

道路は、車の通った跡が筋となってアスファルトが見え始めている。

白い雪は、灰色の氷になり、少しずつ溶け出して黒い筋を作っていた。

滑らないように注意しながら、その黒い筋をつたって駅に向かう。

走る電車の窓越しから、モノトーンの様子に目を向けた。

白いキャンバスに黒い線がある。車の通った跡だった。

白地に一本の線。静寂の夜に車が通った様子が浮かぶ。

駅周辺の太い道は、幅の広い黒い帯の脇、薄汚れた雪が残っていた。

雪の降った朝の道は、人、物の流れが表れていて、経過を想像することができる。

そんなことを思いながら橋を渡った時、巨大な黒い筋が目に飛び込んできた。

川だ。それは舗装道路の様に見えた。

水か。絶え間ない水の流れがあった。

圧倒する大きさの道、自然の物流だった。

 

対照関係

インターネットの地図アプリで、能登半島を見た。想像してたより、大きな半島だった。

房総とよく似ている。縄文時代の痩せ細った半島にそっくり。

プロペラの羽を180度回した反対側の海に突き出た関係なんだな。

それで、佐渡島が、伊豆半島にあたるのだろうか。

日本列島は、反対側に似たようなものが存在してるな。必然なのか、どうなんだろう。

そういう関係なら、半島ならではの一致する境遇もあるだろう。

遠く離れている点も、災害においては都合がいい。協力しない手はない。

首都圏は、集中しすぎと言われる。対照関係を意識した分散を進めてもいいのではないかな。

今はその時で、太平洋側から全力で応援してきたい。離れていても、ずーっと、寄り添って。

 

朝一のタスク

 

「ティティティティティティ」「ブウォッ」

点火した。ヤカンをコンロにかける。

「ティティティ」「ブウォッ」

そおっとレバーを右へ、トロ火に設定する。

冷蔵庫から卵を二つとベーコン取り出した。

卵を2つ割って、プライパンへ投入する。同じくベーコン2枚も。

そうして、しばらくガスコンロを眺めた。

ベーコンを裏返す。裏返す。裏返す。フレーク状を目指し、皿に取り出す。

「シゅーッ、しウィーー、フィーーーピーーーー」

勢いよく吹き出す気体へ目を向ける。ハイトーンにせかされ、コンロを止めた。

魔法瓶の水筒へお湯を注ぎ、ティパックを一つ入れる。残りは、ポットへ注いだ。

急須へお茶っぱを入れる。

「おはよう、ありがとう。」「おはよう。」

ここから、バトンタッチ。

時計に目を向ける。6:20。

それは、予定時刻通りの始まりの時間。

今日もありがとう。

 

天のめぐみ

信号待ち。目にとまった花。小さな木に、いくつか梅の花が咲いていた。

小さくても時を刻んで、季節通りに咲いている。

桜は大丈夫だろうか。今年は、季節通りとはいかないかもしれない。

早咲きか。それが、暖かい季節への目印ならば、今年は早咲きがいい。

辛い思い、寒さに耐え忍んでいる人たちがいるなら、それがいい。

 

簡単だけど近づけないこと

携帯で、パレスチナの子供の映像を目にした。

そこは、進行形の殺し合い空間。涙した。マスクを目元まで上げる。

簡単な話「人を殺しちゃいけない。」と理解している。

いや、本当は理解していないのか。私は、いつも遠い地域の他人ごとだ。

私は、目の前で目撃したら止めるのか。そこで何もしない自分は、私でない。

「人を殺すこと」の正当な理由は無いと認識している。

簡単なこと、皆はどう考えてるのか。言葉巧みに騙されているのか。

反対するものの力って何なのだ。

分かっているはずなのに出来ないことの一つ、「平和な世の中に、変えること。」

考えると何か込み上げて、また涙した。人目はどうでも良くなる。

どうにも悔しくて、一駅前で下車した。そのまま、走って帰る。

スピードは落ちても止まらずに。

 

 

交代

5:30

仕事を終えた駅までの道、人影はなかった。

昼間は見せない静かな広がり。辺りは暗い。

通り過ぎるコンビニだけが、切れ目のない勢いのある光を放っていた。

地下鉄の改札、出勤する人が数名でてくる。

階段を降り、電車に乗り込んだ。意外にも乗客は多い。

起きている人、倒れかかっている人、若い人を見渡しながら、空いている席を探す。

誰も座っていない一角を見つけ座った。これほど早い時間でも空いている席をを探すとは。

電車は、これから支える頼もしい組、エネルギー切れ組が、混在する密度の高い空間だった。

 

6:25

最寄駅で降りた帰り道、川沿いを歩く。

川上に目をやると遠くが、霧でよく見えなかった。水面をはうように、白いもやの塊がが漂う。

周囲は、ゆっくり明るくなって陰影がはっきりした。東の雲が、うっすらオレンジ色に染まっていく。

空と呼応して、水面の霧が、そろそろと消えかかる。お疲れさま。

交代の時刻。街が騒がしくなるころだ。私も、眠ることにしよう。